前回までは退職後から再就職後までに活用出来る雇用保険について注意点や手続きについてお伝えしてきました。今回から数回に分けて社会保険の内、年金保険制度について注意点等を詳しくお伝えしていきます。今回は、国民年金の加入手続きや保険料の支払い方法について解説していきます。
年金保険とは
『退職後の社会保険の手続きについて~健康保険~』記事にて簡単に年金保険にも触れましたが、今回はもう少し詳しく年金保険制度について確認しておきましょう。
年金保険には、国民年金、厚生年金、共済年金があります。
国民年金
20歳以上60歳未満のすべての国民が対象で、健康保険(協会けんぽ)及び厚生年金保険に加入している被保険者が適用事業所を退職して自営業者等になった場合には、医療保険は国民健康保険等へ、年金保険は国民年金へ切り替える必要があります。
国民年金に加入している方は第1号被保険者となり、対象者は自営業者、20歳以上の大学生、配偶者の扶養に入れない無職の方です。ご家族の扶養に入られている方は、第3号被保険者となります。
国民年金は納付した期間に応じて給付額が決定されますが、20歳から60歳までの40年間すべて保険料を納付していれば、月額約6.5万円(令和2年度)の満額(年額781,700円)を65歳から受給することができます。また、学生のときや失業した、所得が低いなどの理由で保険料を納めることが難しい人に対しては、保険料の納付を一時的に猶予したり、納付を免除する制度があります。
厚生年金
厚生年金保険の加入対象となる会社等で働く人が対象で、対象となる会社で働く会社員は20歳未満でも厚生年金を支払う必要があります。
厚生年金については、別記事で詳しく解説していきます。
共済年金
国家公務員、地方公務員や私立学校の教員などとして常時勤務する人は組合員(私立学校教職員共済では加入者)となる共済(組合)制度です。
国民年金の加入手続き等
加入の手続き
厚生年金保険の加入対象となる会社等で働いていた20歳から60歳までの方が退職され、かつ、ご家族の扶養に入らない場合は、以下の手続きを行って下さい。
- ご本人または世帯主が、
- 退職日の翌日から14日以内に、
- 住所地の市区役所または町村役場に、
- 年金手帳または基礎年金番号通知書を提出する。
尚、60歳以上で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない方や、受給資格期間は満たしているが保険料を納付した期間が短かく満額(40年間保険料納付分)の老齢基礎年金が受けられない方は、65歳になるまで国民年金に任意加入することができます。

保険料について
国民年金第1号被保険者及び任意加入被保険者の1カ月当たりの保険料は、令和2年度現在で、一律16,540円で、納付期限は納付対象月の翌月末日です。
注意ポイント
※納付期限までに保険料を納めないと障害基礎年金や遺族基礎年金を受給できない場合があります。
まとめて前払いすると、割引が適用されます。
前払いには以下の方法があります。
・国民年金前納割引制度 口座振替 前納
・国民年金前納割引制度 現金払い 前納
・国民年金前納割引制度 口座振替 早割
また、国民年金保険料の「2年前納」制度にて、平成29年4月より、現金・クレジットカード納付による2年前納が可能になっています。
尚、収入の減少や失業等により国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合には、要件を満たせば、保険料免除制度または納付猶予制度を活用できます。
振替方法別割引額
令和2年度の振替方法別割引額は以下の通りです。
振替方法 | 1回あたりの納付額 | 2年分に換算した割引額 | 振替日 |
2年前納 | 381,960円 | 15,840円 | 4月30日 |
1年前納 | 194,320円 | 8,320円 | 4月30日 |
6カ月前納 | 98,110円 | 4,520円 | 4月30日 11月2日 |
当月末振替(早割) | 16,490円 | 1,200円 | 当月末 |
翌月末振替 | 16,540円 | なし | 翌月末 |

保険料の納付の手続き
納付書「領収(納付受託)済通知書」での支払い
現金納付の場合
「領収(納付受託)済通知書」を使用し、納付期限(納付対象月の翌月末日)までに銀行などの金融機関、郵便局、コンビニエンスストアにて納めてください。
Pay-easy(ペイジー)の場合
スマートフォンやパソコンで、自宅や外出先から、夜間や休日でも納付ができ、納付書の左側に記載されている「収納機関番号」、「納付番号」、「確認番号」をPay-easy対応のATM、インターネットバンキングまたはモバイルバンキングの画面に入力するだけで納付できます。
口座振替
通帳をお持ちの金融機関またはお近くの年金事務所の窓口に以下の書類等を持参して手続きを行って下さい。
- 国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書兼国民年金保険料口座振替依頼書
- 基礎年金番号のわかるもの(年金手帳や納付書など)
- 口座番号のわかるもの(預(貯)金通帳またはキャッシュカード)
- 届出印(通帳に使っている印鑑)
振替開始月は、申込みをした翌月以降となり、振替日は月の末日となります。(末日が金融機関の休業日にあたる場合は翌営業日)
口座振替では、以下の方法を選択できます。
- 2年前納(4月~翌々年3月分)
- 1年前納(4月~翌年3月分)
- 6カ月前納(4月~9月分、10月~翌年3月分)
- 当月末振替(早割) ※本来の納付期限よりも1カ月早く口座より振替する方法です。
- 翌月末振替
クレジットカードでのお支払い(継続納付)
クレジットカードから継続的に支払う方法で、前納も可能です。
前納方法は、次の3種類です。
- 2年前納(4月分~翌々年3月分)
- 1年前納(4月分~翌年3月分)
- 6カ月前納(4月分~9月分、10月分~翌年3月分)
注意ポイント
利用するクレジットカードの利用限度額や有効期限に注意が必要です。
年金事務所の窓口に以下の書類等を持参し手続きしてください。
- 国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書
- 基礎年金番号のわかるもの(年金手帳や納付書など)
- 利用するクレジットカード
- 国民年金保険料クレジットカード納付に関する同意書(被保険者とカード名義人が異なる場合)
申込みは2年、1年、6カ月(4月分から9月分)前納を希望される場合は2月末までに、6カ月(10月分から翌年3月分)前納を希望される場合は、8月末までに申込む必要があります。
申込み後、1か月程度の手続き期間を要するようです。
付加保険料の納付制度
これらの保険料に加えて、少しだけ保険料(400円)を納めることによって、将来の年金額を多く受け取ることが出来ます。
付加年金額:200円×付加保険料納付月数で、2年間で元が取れます。40年間支払うと、96,000円がプラスされることになります。
まとめ
まとめ
- 20歳から60歳までの自営業者や、ご家族の扶養に入らない方は国民年金に加入する必要がある。
- 国民年金の加入者は、第1号被保険者となる。
- 加入手続きは退職の翌日から14日以内に、住所地の市区役所または町村役場にて手続きする。
- 支払う保険料は定額で月額16,540円、まとめて前払いすると割引される。
- 口座振替が便利でお得。
- 付加保険料は月額400円、受給後2年を超すと元が取れる。
以上、国民年金の加入方法と保険料の支払い方法についてでした。次回は、年金の受給について解説していきたいと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。