前回は退職した際の社会保険の内、雇用保険の基本手当(失業手当)の手続きについてお伝えしてきました。今回は、雇用保険の内、再就職後を支援してくれる手当の手続きについて注意点等を詳しくお伝えしていきます。
雇用保険についてはこちらの記事もあわせてどうぞ
-
関連退職後の社会保険の手続きについて~雇用保険 基本手当~
これまで退職した際の退職金等の所得税と住民税と、社会保険の内では健康保険の手続きについてお伝えしてきました。今回は、雇用 ...
続きを見る
-
関連退職後の社会保険の手続きについて~雇用保険 技能講習に関する手当~
前回は退職した際の社会保険の内、雇用保険の基本手当(失業手当)の手続きについてお伝えしてきました。今回から数回に分けて、 ...
続きを見る
-
関連退職後の社会保険の手続きについて~雇用保険 求職活動時の手当~
前回は退職した際の雇用保険の内、退職後から再就職までの間に活用できる制度について注意点や手続きについてお伝えしてきました ...
続きを見る
-
関連退職後の社会保険の手続きについて~雇用保険 一般教育訓練給付金~
前回は退職した際の雇用保険の内、広域求職活動費、短期訓練受講費、求職活動関係役務利用費について注意点や手続きについてお伝 ...
続きを見る
-
関連退職後の社会保険の手続きについて~雇用保険 専門実践教育訓練給付金~
前回は退職した際の雇用保険の内、広域求職活動費、短期訓練受講費、求職活動関係役務利用費について注意点や手続きについてお伝 ...
続きを見る
その他の退職時の手続きの記事はこちらから
再就職に関する手当について
雇用保険の中には、再就職や起業した方への手当もあります。
これらの手当は以下の通りです。
- 就職促進給付:再就職手当、就業促進定着手当、就業手当、常用就職支度手当、移転費
それぞれの手当について解説していきますね。
再就職手当
雇用保険の基本手当の受給資格の決定を受けた後に、早期に安定した職業に就いたり、事業を開始した場合に支給される手当で、より早期の再就職を促進することを目的としている。
受給額
基本手当の待期期間終了日の翌日から受給可能となり、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の1/3以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。
支給額は以下の通りとなります。
支給残日数が2/3以上の場合:所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額
支給残日数が1/3以上の場合:所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額
基本手当日額の上限は、60歳未満で6,195円、60歳以上65歳未満で5,013円となります。
受給の要件
- 待機期間終了後に再就職または事業を開始したこと。
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上あること。
- 離職した前の事業所及びその事業所と密接な関わりがある事業所に就職していないこと。
- ケガ、病気等の正当な理由がない自己都合退職者は、待期期間終了後の1か月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること。(これ以降は自営の開始や他の方法の就職でも可。)
- 1年を超えて勤務することが確実であること。
- 原則として雇用保険の被保険者であること。
- 過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと。
- 受給資格決定前から、採用が内定されていた事業主に就職していないこと。
受給の手続き
居住地を管轄するハローワークにて手続きを行います。
- 再就職先の企業から採用証明書を貰い、ハローワークに提出する。
- 再就職手当支給申請書、雇用状況等証明書をハローワークから貰い記入する。再就職先の企業の記入も必要です。
- 再就職手当支給申請書、雇用状況等証明書出勤簿またはタイムカードのコピー(入社から1週間程度)、雇用保険受給資格者証をハローワークに提出する。
申請期限は再就職した翌日から1か月以内です。
就業促進定着手当
再就職手当の支給を受けた人が、引き続きその再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分(賃金日額)の額に比べて低下している場合、給付を受けることが出来ます。
受給額
(離職前の賃金日額-再就職手当の支給を受けた再就職の日から6か月間に支払われた賃金額の1日分の額)×再就職の日から6か月間内における賃金の支払いの基礎となった日数(通常月給制の場合は暦日数、日給月給制の場合はその基礎となる日数、日給制や時給制の場合は労働の日数)
上限額:基本手当日額 × 基本手当の支給残日数に相当する日数 × 40%(再就職手当の給付率が70%の場合は30%)
基本手当日額の上限:60歳未満で6,195円、60歳以上65歳未満で5,013円となります。
受給の手続き
居住地を管轄するハローワークにて手続きを行います。
提出書類
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 就職日から6か月間の出勤簿の写し
- 就職日から6か月間の給与明細または賃金台帳の写し
就業促進定着手当支給申請書は、再就職手当の申請後に支給決定通知書と一緒に郵送される書類ですので保管しておいて下さい。支給申請書が届かない場合は、ハローワークに問合せて下さい。
就業手当
就業手当は、基本手当の受給資格がある方が再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態(アルバイト、パートや派遣など)で就業した場合に基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上あり一定の要件に該当する場合に支給されます。
注意ポイント
この手当は、受給額が基本手当の30%と少なく、また基本手当の受給日が減ってしまうため、条件によっては損をする場合もありますので安易に申請するのは控えた方が無難です。
受給額
基本手当日額 × 30% × 就業日となります。
基本手当日額の上限:60歳未満は1,858円、60歳以上65歳未満は1,503円となります。
受給の手続き
居住地を管轄するハローワークにて手続きを行います。
就業手当支給申請書、雇用保険受給資格者証、就職した事実を証明する書類を添付してハローワークに4週間に1回提出します。
常用就職支度手当
基本手当の受給資格者で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3未満である場合の高年齢受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者のうち、障害のある方など就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に、一定の要件に該当すると支給される手当です。
受給額
基本手当日額 ×基本手当の支給残日数(上限90日)× 40%
基本手当日額の上限:60歳未満で6,195円、60歳以上65歳未満で5,013円となります。
受給の要件
- 安定所の紹介により1年以上引き続いて雇用されることが確実であると認められる職業に就いたこと。
- 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと。
- 待期期間又は離職理由、紹介拒否等による給付制限期間が経過した後職業に就いたこと。
- 常用就職支度金を支給することがその者の職業の安定に資すると認められること。
- 就職日前3年以内の就職について再就職手当又は常用就職支度金の支給を受けたことがないこと。
受給の手続き
就職した翌日から1か月以内に、居住地を管轄するハローワークにて手続きを行います
- 就職先の企業から採用証明書を貰い、ハローワークに提出する。
- 常用就職支度手当支給申請書をハローワークから貰い記入する。就職先の企業の記入も必要です。
- 常用就職支度手当支給申請書、雇用保険受給資格者証、日雇受給資格者の場合は、被保険者手帳をハローワークに提出する。
移転費
受給資格者等がハローワークや特定地方公共団体または職業紹介事業者が紹介した職業に就くため、又はハローワークの所長の指示した公共職業訓練等を受講するため、その住所又は居所を変更する必要がある場合に、受給資格者本人とその家族(その者により生計を維持されている同居の親族)の移転に要する費用が支給されます。
受給額
移転費の支給を受けることができるものと随伴する家族について、旧居住地~新居住地までの区間の順路によって計算した額が支給され、移転費には、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、移転料、着後手当の6種類があります。
受給の要件
以下の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険の受給資格者等であること。
- 待期の期間が経過した後に就職し、または公共職業訓練等を受けることとなったこと。
- ハローワーク、特定地方公共団体または職業紹介事業者が紹介した職業に就くため、またはハローワークの所長の指示した公共職業訓練等を受けるために、住所・居所を変更すること。
- 事業所または訓練施設が、次のいずれかに該当するため、ハローワークが住所・居所の変更が必要であると認めること。(1) 通勤(所)時間が往復4時間以上であること(2) 交通機関の始(終)発の便が悪く、通勤(所)に著しい障害がある場合(3) 移転先の事業所・訓練施設が、特殊性や事業主の要求によって移転を余儀なくされる場合
- その就職について、就職準備金その他移転に要する費用が就職先から支給されないこと、又は就職先からの支給額が移転のために実際に支払った費用に満たないこと。
受給の手続き
移転費の支給を受けようとする場合は、移転の日の翌日から起算して1ヶ月以内に住居所管轄のハローワークへ、移転費支給申請書に受給資格者証等を添えて提出します。
移転費の支給を受けた場合は、移転後すぐ就職先の事業主に、移転費支給決定書を提出します。
就職先の事業主は、その移転費支給決定書に基づき移転証明書を作成し、移転費を支給したハローワークへ送付します。
注意ポイント
移転費の支給を受けた後、紹介された職業に就かなかった、指示された公共職業訓練等を受けなかった、移転しなかった場合、その支給された移転費に相当する額を返還しなければなりません。
まとめ
これから再就職や起業をお考えの方は、これらの制度をしっかりと利用も視野に入れ、自分に有利となるような再就職や起業のタイミングを十分検討することが重要です。出来るだけご自身の出費を抑えることを考えていきましょう。
以上、雇用保険の再就職に関する手当の手続きについてでした。次回は、雇用保険の退職後~再就職までの間に活用できる制度について解説していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。